スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

16


 人が人を殺すということは、人が人を苦しめるということと、それほど異質なことだろうか。
 はっきり、一個の屍体を自分の手でつくりあげることは、よっぽど派手な操作にちがいないが、それほど人目に立たないで、僕らは四六時中、小刻みに、他人をさいなんでいる。互いに傷つけあい、苦しめ合い、人知れず相手を死に追い込み、自分もまた、追い込まれている。それほどの関与なく、人生を生きつづけるという行程は、考えてみると実に困難である。生きるということ自身がそういう殺戮の連続なのだ。人間は、他のいきもの同様、残酷なものだ。生きることがすでに、むごいことだ。人と人とのかかわりあいは、血を流す作業だ。より深い傷を与えるものが「愛情」の罠だ。元来、人間は、己れの欲望のほかは、盲目な動物だ。


 ―『反骨 金子光晴エッセイ・コレクション』(「断片」) 大庭萱朗編

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。