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浮世の画家

終戦後間もない日本。
老齢の画家が末娘の縁談を期に過去を回想するが、次第に「わたし」が語る記憶と現実との齟齬が浮き彫りになっていく…。

記憶というのは曖昧なものだし、常に誰かのフィルターを通して語られる。
例えある日ある時、同じ時間、同じ空間を共有していたとしても、わたしの記憶とあなたの記憶は違うものであろう。
真実はいつも薮の中。そもそも真実などという概念が幻にすぎないのかもしれない。

この小説で描かれる戦後の日本が、映画のセットのようなどこか作り物めいた印象を与えるのは、5歳で渡英し英国に定住した著者の来歴によるのだろうか。アイデンティティの不確かさも。
地上からほんの少しだけ浮き上がった箱庭の中の世界のような雰囲気が、「わたし」の語りの不確かさを強めている。

浮世の画家にはなりたくないと画風を変えた画家が辿り着いたのは、また別の浮世でしかなかった。箱庭の中で右往左往する人間のおかしみ、哀しさよ。


浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)
(2006/11)
カズオ イシグロ




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