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野性の呼び声

座右の書になりそうだ。

南の陽光を浴びた何不自由ない暮らしから一転、極北の氷原で橇を引く運命となった大型犬バック。
初めて見る雪、肩に食い込む引き革、容赦なく棍棒をふるう人間ども、隙あらば喉笛に食らいついてくる他の犬たち。

初めはとまどい徒に怒りを露にすることしかできなかったバックだが、眠っていた野性の血が目覚めると共に、過酷な環境に急速に己を適応させていく。肉体は鋼のように鍛え上げられ、神経は針のように研ぎ澄まされ、冷静な判断力としたたかな精神が培われる。そう、「生存のための非情な闘いのなかでは、徳義心などは所詮、無益なものであり、障害にしかならない」のだ。

安っぽいアウトロー小説の主人公なら、橇を引くなんてまっぴらごめんとすぐさまその場を逃げ出して自由だの何だの喚くのが関の山だろう。
バックは違う。橇犬としても頭角をあらわすと、先導犬スピッツを計算高く執拗に追い詰め、壮絶な死闘を制してリーダーの座を勝ち取る。覇者となるやバックは仲間の犬たちの根性を叩き直し、最速の犬橇チームを率いるのだ。
誇りをもって己の責務を全うする。しかし、心まで服従したわけではない。

森の奥深くからバックをいざなう声は、バックの体内に膨れ上がった野性に他ならない。野性の呼び声を自分の内なる声をバックが耳にするとき、わたしの血もふつふつと沸き上がる。

やるかやられるか、勝つか負けるか、殺すか殺されるか、食うか食われるか。強者だけが生き残ることを許された世界で、被毛を温かい血で染めて孤高に生き抜くバックの姿はどんなに美しいことか。
残酷だなどと思ってはいけない。生きるということは血を流すことだ。命を奪うということだ。例え直接他者を手にかけることのない社会にあっても、自分の手だけが血に汚れていないなどと言えようか。
力が支配する世界だからこそ、唯一強い絆で結ばれる人間ジョン・ソーントンとの愛情の交換が尚のこと鮮やかにバックの生を彩り、胸に響く。

ままならない現実に愚痴をこぼしたり、背中を丸めて泣きたくなった夜には、この一冊を繰り返し読むがいい。甘えた心に強烈な張り手をくらわしてくれるだろう。荒野をしなやかに駆けるバックの呼び声を聞くだろう。


野性の呼び声 (光文社古典新訳文庫)野性の呼び声 (光文社古典新訳文庫)
(2007/09/06)
ジャック ロンドン


Comment

ann

v-91お誕生日おめでとう!!

今日は特別なハグを!!色付きの文字

Re: ann

>annさん

> 今日は特別なハグを!!

つぶれるくらい抱きしめて。むぎゅーっ。

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